- 2020年12月16日17:50:25更新
日本伝統色の参考本はコレ!着物コーディネートにも役立つ『有職の色彩図鑑』
平安時代以来の和の伝統色80色と、かさね色目など装束の色目約290色を網羅した色図鑑。全370色以上の豊富な写真と文献資料で解説した書籍『有職の色彩図鑑ー由来からまなぶ日本の伝統色ー』が話題。現代日本における装束研究の第一人者として知られる著者の八條忠基さんのインタビューと合わせてご紹介します。
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好きな着物に合わせる帯、帯締め、帯揚げ、半衿、重ね衿など・・・、組み合わせに悩んじゃう着物女子は多いはず。
どんな色を合わせたらしっくりくるだろう・・・?
色々試行錯誤して考えてたら、ものすごい時間がたってしまって、結局「いつもと同じパターンでいっか」といった感じになっちゃっていませんか?
持っている着物で、1パターンのコーデしか楽しめていないならもったいない!
帯や帯揚げ半衿など、それぞれのアイテムの色をちょっと変えるだけでグンっと印象も変わり、何倍も楽しめます。
でも、合わせるアイテムも多いし、どう冒険して変えたらマッチするのかがわからなくて、難しいですよね。
そこで今回は着物コーディネートにも役立つ”和”の「カラー」をテーマに、色の組み合わせがおかしくないか不安なってしまう方にもオススメしたい、色合わせのコツがわかる話題の書籍をご紹介します。
色合わせ法は、日本の伝統色の組み合わせから学ぶ!
発売わずか1か月で重版が決定した話題の書籍。
『有職の色彩図鑑ー由来からまなぶ日本の伝統色ー』
和の色の組み合わせや伝統色について詳しく学べる色図鑑です。
それぞれの色彩のモデルとなった植物や動物、染料などが鮮やかなカラー写真で紹介されているので、とってもわかりやすいのがいい♪
古来日本人がどんな風景を見て、どんな色をどのように身につけていたのかを感覚的に理解することができます。
見ているだけでも楽しいですが、着物の色合わせの参考にもなると着物愛好家の間でも好評のこの図鑑。よく使われる色合わせの由来の解説や、草花を参考にした黄金の色合わせも掲載されています。
クリエイターさんにもオススメのポイントは、80色の伝統色それぞれにカラーコード(CMYK、RGBなど)も記載されているのが特徴。デザインにも役立つ優れものなんです。
それでは、書籍の中身の一部を特別にご紹介します♪
(出版社様に許可をいただいています◎)
年末年始に着たい!おめでたい重ね
年末年始のおめでたいシーンにおすすめの”重ね”。
色と色を重ねて配色美を表現する「襲色目(かさねいろめ)」は、世界最古の配色マニュアルと言われ、平安時代に貴族が着用していた装束「十二単(じゅうにひとえ)」がその代表。
平安人は色の異なる大袖を何枚も重ね着し、その美しいグラデーションと季節感を楽しんでいました。
松重(まつがさね)
着物のかさね色目のほとんどは、四季の草花を表現したものなのです。平安貴族たちは、変化する四季折々の自然を愛し、ファッションにも取り入れることで自然との一体感を満喫していたようです。
紅の匂(くれないのにおい)
松や梅などの草花を参考にした色鮮やかなグラデーションです。
「菖蒲の重ね」は、花の色じゃないの?!
菖蒲(しょうぶ・あやめ)
5月〜6月に見頃を迎える菖蒲(しょうぶ・あやめ)。
平安貴族たちは「菖蒲」の色をとっても愛していました。
グリーンとピンクの「菖蒲」重ねは、よく「葉と花の色」と勘違いされていますが、実はこのピンクは根っこの色を表したものなのです。(書籍P.90コラム参照)
平安人は、このピンクに色づく菖蒲の根っこに興味を持っていたのだとか。これは、平安時代、菖蒲の根の長さを競う「根あわせ」というゲームが盛んに行われいたのがきっかけ。このゲームは、根の長さを寿命の長さになぞらえて、長寿を競い願うようなゲームだったんですって。
ちなみに、とってもよく似た「杜若(かきつばた)」の重ねは、根っこではなく花の色を表しています。
カキツバタ
杜若(かきつばた)
紅白の「梅」重ねの正体は・・・?
梅・白梅(うめ・しらうめ)
おめでたい紅白の「梅」重ねも、「白梅と紅梅の組み合わせ」と勘違いされがちですが、白梅と紅梅の咲く時期は異なり、本来は同時には存在しません。
実はこれ、白梅の「白いはなびら」と「赤いがく」を組み合わせた色目なんです。
平安人らしい繊細で鋭い観察力にハッとしますね♡
青葉と紅葉?「カエデ」重ねの由来は?
若鶏冠手(わかかえで)
上の図の色合わせの「若鶏冠手(わかかえで)」をみると、つい、楓(かえで)の青葉の頃と紅葉した頃を組み合わせた色かな、と考えてしまいますが、実はこれも別のモデルが。
楓は5月頃に赤い小さな花をつけるのをご存知ですか?
そう。「若かえで」とは、グリーンの若葉と赤い花の組み合わせをモデルにしたものなのです。
『枕草子』を読むと、この若カエデの緑と赤の組み合わせを賞美しているシーンがあります。
ほかにも意外な由来の重ねがたくさん!
紅梅が咲いた後に季節外れの雪が降ると、赤い花びらの上に雪が積もって美しいコントラストが見られます。「雪の下」重ねは、そうした珍しい現象を写し取ったものだといいます。
雪の下・初雪(ゆきのした・はつゆき)
著書 八條忠基さんからメッセージをいただきました
色だけでなく、装束や歴史についても知れるこの書籍。
著書の八條忠基さんにインタビューさせていただきました♪
出版に至ったきっかけはなんですか?
2018年に出版した『有職装束大全』(平凡社)がSNSで話題となり、想像を上回る反響を頂戴しました。平安以来の公家の着物「有職装束」や関連領域文化について、関心をお持ちの方が多いと言うことがわかり、「有職の色彩」の書籍も需要があるのではないかと考え、書籍出版の企画を出させて頂きました。
本書のこだわりを教えてください!
色彩の典拠となる文献、用例の文献を誌面の許す限り原文で紹介することで内容の客観性を高め、いつ・どのような場面で・誰が使った色彩なのかを明らかにしました。
また、伝統色彩に関する書籍は既にたくさん出版されていますが、公家文化の「有職」に関する色彩に特化したものは存在しませんでした。そこで本書ではターゲットを有職の色彩にしぼっているのが特徴です。
現代色と伝統色の主な違いはなんでしょうか?
染料が草木染めしかなかった平安時代と、化学染料によりあらゆる色彩表現が可能な現代とは、「使える色」の数に大きな違いがあります。その限られた色彩の中で、いかに自然の風情を生活に取り入れるか、平安の人々は巧みな工夫で乗り切りました。それが複数の色生地を組み合わせる「重ね色目」です。そこに、自然と同化することに安心と幸せを感じた昔の日本人の、雅やか(みやびやか)な心が表現されているのです。
着物愛好家のみなさんへメッセージをお願いします!
私たちの祖先がどのように自然を見ていたか、どのように愛していたのか。有職の色彩は、それが「目で見てわかる」ものです。四季折々に見せてくれる美しい自然の風情を、衣生活にどのように活かしてきたのか。それを知ることは、今を生きる着物愛好家の皆さまにも、きっと役に立つことと思います。
全国の書店・オンライン書店、淡交社HPにて発売中
伝統的な色合わせの中には、意外性のある配色もたくさん。
平安貴族たちの美的センスは、着物コーディネートにも、現代生活における色合わせの参考にもなりそうです。
✔︎ 発売わずか1か月で重版が決定!
✔︎ 平安時代から伝わる伝統的な80色の色と、それらを組み合わせたかさね色目や織色など装束の色目約290色を文献資料に基づいて再現。
✔︎ 80色の伝統色それぞれにカラーコード(CMYK、RGBなど)も記載。
✔︎ 着物色合わせの参考にも♡
『有職の色彩図鑑ー由来からまなぶ日本の伝統色ー』
出版社:淡交社
発売日:2020/10/16
単行本(ソフトカバー):206ページ
価格:¥2,700(税別)
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第1章 有職の色〔染色〕(深紅、中紅 ほか)
第2章 表裏の重ね色目(梅・白梅、梅重 ほか)
第3章 衣のかさね色目(『満佐須計装束抄』『女官餝抄』 ほか)
第4章 織色(薄色、半色 ほか)
第5章 緂の色(紫緂、棟緂 ほか)
第6章 位当色〔当色〕
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この記事のライター
- 女の子の着物メディアKIMONO BIJIN