• 2023年6月2日13:04:15更新

宵闇に、白地のゆかた 〜小説の中の着物〜 宇野千代著『おはん』

小説を読んでいて、自然と脳裏にその映像が浮かぶような描写に触れると、登場人物がよりリアルな肉付きを持って存在し、生き生きと動き出す。今宵の一冊は、宇野千代著『おはん』。宵闇に浮かぶ白地のゆかた。着こなしに少し気を遣う部分はあるけれど、だからこそ白地のゆかたは美しい。

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宵闇に、白地のゆかた 〜小説の中の着物〜 宇野千代著『おはん』「徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー」第二十五夜

今宵の一冊は、宇野千代著『おはん』。

先月に引き続き、ひとり語りで進む物語。語るのは、前妻であるおはんと、現在ともに暮らす(というより養ってもらっている)芸者おかよとの間で揺れ動く幸吉です。

先月取り上げた『円朝の女』の、切れ味の良いちゃきちゃきの江戸言葉とは打って変わり、はんなり…というよりも少々湿度の高いねっとりした関西言葉(著者のあとがきによると「阿波の徳島あたりの方言を主として、それに關西訛りと私の田舎の岩國訛りとまぜ合した、言はば作りものの方言」とのこと)で語られる本作ですが、おかよのいわゆるヒモ状態である幸吉の、言い訳がましく、やたらと自分を卑下する自虐的な口調にちょっとイラッとすることも(笑)。

宵闇にぼんやりと浮かび上がる、おはんの姿。

幸吉が再びぐらりときてしまったのは、この白地のゆかたのせいもあったかもしれません(まぁもともとそういう人だった、というのは置いといて)。

夜の白地のゆかたは、実際の寝巻きを連想させるものでもあり、色っぽさや触れなば落ちんといった風情を感じさせる心許なさを表す衣裳として、これほどに効果的なものはなかったのではないでしょうか…

レトロモダンな印象の薊が大胆に染められた白地のゆかた。

白地でも、こんな風に柄が大きく配されていると白場が少なくなるので着こなしやすく、また、墨色と深い臙脂の配色が大きな花柄でも大人っぽい印象に。

合わせた麻の八寸名古屋帯は、墨色に暖色系の縞と、いわゆる涼やかな配色ではありませんが、それがかえって大柄によるゆかた感を控えめにしてくれてちょっと着物っぽい雰囲気に。ゆかたの柄とほぼ同じ配色で全体の色数を抑えていることもあり、暑苦しさを感じさせません。

小説をモチーフにした素敵なスタイリングのお話…
詳しくは、きものと公式サイトより!↓↓↓

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