• 2022年12月30日0:58:02更新

“流れる”ような身のこなし 〜小説の中の着物〜 幸田文『流れる』

小説を読んでいて、自然と脳裏にその映像が浮かぶような描写に触れると、登場人物がよりリアルな肉付きを持って存在し、生き生きと動き出す。今宵の一冊は、幸田文著『流れる』。

まるでスローモーションを見ているかのような錯覚すら覚える、まさに“流れる”ような身ごなしが著者独特の文体で語られます。

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“流れる”ような身のこなし 〜小説の中の着物〜 幸田文『流れる』「徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー」第二十夜

同著者の作品に、着物好きのバイブルと言っても過言ではない『きもの』がありますが、今回取り上げる今宵の一冊は『流れる』。

戦後間もないある年の師走、かつては隆盛を誇ったものの、現在は落ちぶれ苦しい経営状態にある芸者置屋「蔦の家」に住み込みの女中として勤め始めた梨花(作中では呼びにくいからと春に変えられてしまいますが)の目を通して見た花柳界の人間模様が描かれた物語です。

これは成瀬巳喜男監督による映画もとても良いので(田中絹代さん、山田五十鈴さん、高峰秀子さん、杉村春子さんと豪華な女優陣、そして原作にかなり忠実)どちらもおすすめ。

主人公梨花の腹の据わり方は、すなわち著者自身が投影されたものかと思えるのですが(映画の田中絹代さんは、その辺りがかなりマイルドになっているかも)、そのどこか醒めた観察眼―その事象だけでなく、それに対する自分自身の感情の動き(マイナス面すら)も含めて見据え、ねじ伏せようとする―による目の付けどころが面白く、それが本作の特徴のひとつでもあります。

寒中に百花に先駆けて咲くことから、苦難を乗り越える強さや可憐でありながら凛とした美しさを愛でられる梅。闇の中でも漂う香気は邪を払うとも言われます。

そして、背には可愛らしい鶯。

まるで日本画を体現したような、あるいは日本画から抜け出てきたかのような着こなしで、どこからか初音が聴こえてきそうな錯覚を覚えます。

丸で表されることの多い雪輪模様はどこか可愛らしくなりがちですが、こんなふうに縦の流れのある柄付けだと、白大島のクールな素材感とも相まって、すっきりとした着こなしに…

小説をモチーフにした素敵なスタイリングのお話…
詳しくは、きものと公式サイトより!↓↓↓

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