• 2024年10月6日15:04:55更新

憂いの黒羽織 〜小説の中の着物〜 樋口一葉『十三夜』

小説を読んでいて、自然と脳裏にその映像が浮かぶような描写に触れると、登場人物がよりリアルな肉付きを持って存在し、生き生きと動き出す。今宵の一冊は、樋口一葉著『十三夜』。その秋の豊穣を祝い月に感謝を捧げる“十三夜”。

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憂いの黒羽織 〜小説の中の着物〜 樋口一葉『十三夜』「徒然雨夜話ーつれづれ、あめのよばなしー」第四十一夜

今宵の一冊は、樋口一葉著『十三夜』。

その器量を見込まれ、どうしてもと請われて身分違いながら裕福な高級官吏に嫁いだお関。
可愛い息子も生まれ、端からは所謂“玉の輿”に乗った幸せな身の上と思われているけれど……

抜粋部分は、物語の前半、離縁の覚悟を抱えて実家を訪れたお関と、常にはない夜遅い時間の訪れといつもより地味な装いに不審を感じながらも、その内心までもは知らず歓待する両親とのやりとり。

やれ畳が汚い、着物が汚れるから座布団を敷けと勧めたり、婚家の前を通り掛かっても自分が“木綿着物に毛繻子の洋傘かふもり”では声はかけられないと遠慮したり、娘の幸せな奥様生活を疑わない両親に

“それは成程なるほど和やわらかひ衣類きものきて手車に乗りあるく時は立派らしくも見えませうけれど”

……と胸の内をなかなか明かせず、悶々とするお関の様子が描かれます。

小説を読んでいて、自然と脳裏にその映像が浮かぶような描写に触れると、登場人物がよりリアルな肉付きを持って存在し、生き生きと動き出す。

大丸髷に結い、黒羽織を纏って人力車を降りるーそんなシーンから始まるひと夜の物語が、流麗な文体とともに情緒的で美しい映像となり脳内に繰り広げられる。

まるで古いショートフィルムを観るように。

小説をモチーフにした素敵なスタイリングのお話…
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