• 2016年7月3日0:06:57更新

☆イマジンワンワールド 作品No.001南アフリカ共和国☆

南アフリカ共和国。 喜望峰を有し大航海時代の中継地であったケープタウン。大陸の隆起により生まれた広大な高地。 南アフリカには様々な名勝が存在する。 その中で「世界はきっとひとつになれる」というイマジン・ワンワールドの思想に合致するのがこの国が勇断した「アパルトヘイト政策の撤廃」でした。

奇跡の花園

ネルソンマンデラ元大統領とデクラーク元大統領。 この二人の偉大なリーダーによって人種差別の撤廃が制度的に行われ、二人はノーベル平和賞を受賞しています。 また、南アフリカには奇跡の二週間と呼ばれる不毛の高山地帯が花で覆われる光景があります。この二人が行った人種の融和を「奇跡の花園」に譬えてみよう、 色んな花が共に咲くという光景にこの国の未来を描いてみよう。そうして KIMONO製作のコンセプトが始まりました。

花を愛するローケチ染作家、松田先生

「松田徳通」先生は、日本でも唯一の「ローケチ重ね染め」という技法の持ち主であり、同時に先生のやさしい人柄からなのか、お花の作品が本当に美しく優しい。 きっと、松田先生ならば「奇跡の花園」を描けるに違いないと確信できました。
早速、先生にそのお話をしてみると「えっ!?南アフリカ?俺行ったことないよ」と優しく微笑まれました。 それでもこのプロジェクトのコンセプトに心から賛同されて早速、具体的なデザインの話へと進んでいきました。そこで発見したのが南アフリカは多くの固有種の原産国ということ。それは、国花である「プロテア」をはじめ「ジャカランタ」「極楽鳥花」「アフリカキンセンカ」など 枚挙にいとまがないほどでした。
作家にとって初めての花を描くことはとてもハードルが高いのです。なぜならそれは、緻密なスケッチ力や描写力がないと花は綺麗に描けないから。この場面では画家と同じようなセンスと技術が求められる。しかしその点、松田先生には十分な力が埋蔵されていて、 次にお会いした時にはまさにそこに有るかのように、プロテアの花やジャカランタの花が見事にスケッチされていました。それも色んな角度から見た姿で、つぼみや、咲きかけの様子の瞬間まで・・・舌を巻く素晴らしさでした。

完成が完全にイマジンされた下絵

意匠(デザイン)に取り掛かる際に、「着物の伝統的な取り方(構図)」をしっかりと取り入れることにしました。 ここが重要なポイントで、これこそがKIMONOが絵画ではなく衣装である所以。 そこで「ジャカランタ」の花を「枝垂れ桜」のように肩から枝垂れるように描き プロテアの花を「牡丹」のように大輪に裾に描く、そして「アフリカキンセンカ」を「雛菊」のようにあしらい、 「極楽鳥花」を「百合の花」のように配置する。
こうすることで見事なまでの「下絵」が完成したのです。 ここからは、先生の「天才」が如何なく発揮されます。

日本で唯一の技術「ローケチ重ね染め」


まずは、白(生地の色)から黒(最終的な色)へと至る「色の軌跡(変化)」を紫系統の彩色で想像し、 その色を具体的な色彩で7段階に分けます。 薄い色から順に生地全体にその色を引き、次に色に移る際に残したい部分に溶けたロウを筆にとって、 花の形に合わせて伏せる。 今ある色に、「ある色」を足すと次の色になるような色を「想像して」彩色してゆきます。
【解説 生地は色を付けると、下の色と混ざり合って次の色に変化する・・・ 即ち A(今ある色)+X(実際に挿す色)=B(次に目に見える色)となるので 先生は、Bの色を目指してXの色を実際に引いているのです】この天才的な色彩感覚を過去の経験値から引き出して実践し、この着物の場合は 白→薄い黄色→薄いピンク→薄い紫→赤紫→紫→濃い青紫→黒 という7回にも及ぶ色を重ねることで、実際には黒に見える地色を作っています。気の遠くなる作業です。
さらにその過程で、残したいジャカランタの花の部分にロウを使って伏せて 過去の色を残すことで色彩を表現するという技法を用いています。
染めが進めば進むほど、ロウで伏せられた部分が多くなり、 最後のほうはロウだらけのバリバリの生地になっていくことから 目で見る分には、染め上がりの想像が非常に難しく、 染め上がりの完成した色彩の設計図が先生の頭の中に確りとイメージできていないと、 花の一体どの部分を伏せたらよいのか解るはずがない。 これこそ、まさに、先生が自ら発案し完成した「重ねローケチ染め」の極意。 もちろん他に真似ができるはずはありません。
そしてこの着物には、前述した以外にもたくさんの美しい色が使われています。ということはその他の彩色部分は、上記の色の軌跡とは別の彩色を行ったことになるのです。裾に描かれた「アフリカキンセンカ」は生地に直接ロウで溶いた染料を描く 「手描きローケチ友禅」という技法が用いられてます。遠近感でいうならば「遠」の奥行きを醸し出し 「プロテア」と「極楽鳥花」はジャカランタの花の部分がすべて出来上がった後 色のついた部分をロウで堰を作って伏せる「逆堰だし」という手の込んだ方法をわざわざ用いて、 何度も繰り返しながら、花一枚一枚、葉の一枚一枚を ボカシや微妙な色調の変化によって生き生きと描写してこの着物を完成させています。
この完成した作品をみて松田先生は「僕の生涯随一の作品」と仰いました。 ご自身の新しい表現の扉を開いた作品とも称してくださいました。
こうして、南アフリカの人々が成し遂げた人類の融和を 漆黒の大地に咲く「奇跡の花園」という形で表現した作品が完成したのです。

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この記事のライター

一般社団法人イマジン・ワンワールド

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